親告罪の著作権法違反に親告罪の強姦罪を比喩として用いる

「著作者からの抗議が無い限り違法行為ではない著作権問題」は嘘だよね。被害者が抗議しなければ違法行為ではない強姦とかありえないよね。と書いたら、よくわからない反応がありました。

2007年10月27日 tov 著作権 「著作者からの抗議が無い限り違法行為ではない著作権問題」は嘘だよね。被害者が抗議しなければ違法行為ではない強姦とかありえないよね。

いやいや、これこのブログで何度も何度もやりあってる話だけど、強姦罪親告罪著作権親告罪を一緒にしちゃいけない。
というかみんな、著作権の違法性について万引きだの強姦だの、なんで別の犯罪を(しかも必ず最初から犯罪なものを)持ち出して比喩で話しちゃうんだろう。
著作権著作権で語らないとさ。

たとえばね、僕が友人のAさんの誕生日祝いに、彼のキャラを使ってFlashを作ってプレゼントしたとするでしょ?
そしたらtovさんの言う話だとこれって著作権侵害になるってことかな?
Aさんが喜ぶとか喜ばないとか、知り合いだとか、そういうの関係なしに違法行為?
子供がゲームのキャラクターをお絵かきで描いたら著作権侵害
クラブ活動で関係する雑誌の切り抜きを作って、みんなで共有資料としたら著作権侵害

著作権って、凄くデリケートなんだと思うのね。
その境界が曖昧で、著作者の意向によって変化して、許可と黙認と抗議がグラデーションに存在しないとやっていけない世界なの。
そのために親告罪があるんだし、この前のお偉い人たちの話し合いでも「やっぱ親告罪は必要だべ」って結論で落ち着いたみたいだし。
著作物の利用を違法かどうかについて、他の犯罪を比喩で持ってくるんじゃなくて、状況からそれが行われたら何が起こるか?について考えるべきなんじゃないかな?

自分に都合の良い結論に結びつきそうな行為だけを並べ立てることが、強姦という比喩を持ち出すこととどう違うのか理解できません*1世の中にはレイプ願望のある女性だっているかもしれません=強姦が必ず犯罪とは限らないかもしれませんが、だからといって、一般論としては被害者が黙ってたら強姦は犯罪じゃないなんて言えないでしょう。レイプ願望があれば強姦罪は成立しないとの見解は誤りであると考えられるので削除しました。
当事者の意向はわからない。黙認しているかもしれないし、表明しないだけで積極的に認めているのかもしれない。泣き寝入りしているのかもしれません。でも、分からない状況で一般論として語るなら、違法であるとしか言いようがありません。なお、純粋な法解釈としては黙認という主張は認められないと考えられます。
何が起こるかという話なら、親告罪であっても、告訴なしでも警察等による捜査は一定の範囲で可能ですし*2、民事上の問題は親告罪の規定とはまったく関係ありません。親告罪と言えば何か言った気になっているのは非常に問題があると思います。

重箱モード

著作権法の罰則規定のうち、親告罪となっているのは一部だけです。例えば、著作者の死亡後に著作者人格権の侵害に相当する行為を行った場合や、引用などの際に出所を明示しなかった場合、著作者名を偽って複製物を頒布した場合などは非親告罪です。
そういうわけで、著作権法違反=親告罪なんて安直な物言いをする人を私はあまり信用していません。

第百二十三条  第百十九条、第百二十条の二第三号及び第四号、第百二十一条の二並びに前条第一項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
2  無名又は変名の著作物の発行者は、その著作物に係る前項の罪について告訴をすることができる。ただし、第百十八条第一項ただし書に規定する場合及び当該告訴が著作者の明示した意思に反する場合は、この限りでない。

余談

著作権法の罰則規定について著作権法における罰則規定の概要にまとまっているのを発見しました。

*1:卑怯な比喩を使ったことは認めます。

*2:親告罪事件の捜査と告訴の関係にもちょっと書いてあります。